限界集落「山古志」の軌跡
震災を越えて、守り抜く文化
山古志は新潟県長岡市の山間部に位置する小さな地域です。2005年の平成の大合併により、現在は長岡市の一部となっていますが、日本の原風景がそのままの姿で残っており、美しい自然に囲まれています。山古志はもともと自然災害が多い地域でしたが、その想定を超えた新潟県中越地震が2004年10月23日に発生。この地震によって、山古志は完全な陸の孤島と化してしまい、その時に出した決断は、全村避難。それでも山古志は、現在にいたるまで、歴史的な文化遺産を守り抜き、暮らしを続けてきました。
止まらない人口減少とNishikigoi NFTの誕生
震災発生当時、約2,200人が暮らしていた山古志地域。しかし、避難指示が解除された後も、多くの住民が生活拠点を移したまま戻らず、現在の人口は約720人にまで減少しています。伝統文化は存続の危機に瀕し、人口減少と高齢化が急速に進む中、地域が消滅する可能性すら懸念されていました。
そのような状況の中、2007年には住民主体の地域づくり団体「山古志住民会議」が設立され、村の復興や地域課題の解決に向けて、住民と共に懸命な取り組みが進められてきました。山古志の暮らしを紹介する動画や冊子の制作、特産品の魅力を伝えるイベントの開催などを通じて、移住者の増加を目指しました。しかし、それでも人口減少の流れを止めることはできませんでした。
山古志では、人口減少という深刻な課題に対する新たな解決策として、地域を「開放」する道を選びました。NFTというテクノロジーを活用し、国境や物理的な制約を超えた共感者コミュニティを形成することで、山古志の未来を切り拓くことを目指したのです。その第一歩として、2021年12月に「Nishikigoi NFT」が発行され、ついに「デジタル村民」が誕生しました。
山古志の歴史
新潟県長岡市の山古志地域は、豊かな自然と伝統文化を誇る中山間地域。古くから棚田や和牛飼育が盛んで、美しい棚田風景と共に「錦鯉の発祥地」としても知られています。2004年の中越地震で甚大な被害を受けましたが、地域住民の協力によって再建を進め、現在もその魅力を未来へとつないでいます。
山古志の伝統文化
山古志は泳ぐ宝石とも呼ばれる「錦鯉」の発祥の地であり、丘陵地の斜面に広がる「棚田」に加えて「棚池」の景観が有名です。さらには、千年の歴史を持つと言われる国の重要無形民俗文化財の「牛の角突き」でも有名な地域です。
山古志DAOからネオ山古志村へ
Nishikigoi NFTの発行とデジタル村民の誕生を機に、地域とのより深い連携を目指し、未来へつなぐ楽しいコミュニティ作りが始まりました。地位や立場、年齢、性別を問わず、「想い」に共感した山古志内外のメンバーが集まり、情報を共有し、相談し合いながら挑戦を続ける中で、「山古志DAO」が生まれました。その結果、現在、デジタル村民は約1,700名に達し、多様なサイドプロジェクトも誕生しました。
さらに、デジタル村民が増える中で、コミュニティをより身近で親しみやすいものにするため、「DAO」という言葉を使わず、最新テクノロジーが分からなくても誰でも参加できる「地域のかたち」を模索しました。そして生まれたのが「ネオ山古志村」という新たな構想です。この構想は、中越地震を契機に「山古志の理想の地域像とは何か」を問い直した結果として生まれた、山古志の新しい挑戦でもあります。
Nishikigoi NFTの発起人
新潟県魚沼市出身。2004年の中越地震で被災し、全村避難となった旧山古志村の住民が暮らす仮設住宅内の山古志災害ボランティアセンターで生活支援相談員として活動。その後、地域復興支援員として、住民主体の地域づくり団体「山古志住民会議」の事務局を務め、地域住民とさまざまな事業を展開しました。2021年4月からは、山古志住民会議の代表を務めています。
竹内春華さんは現在、山古志住民会議の代表であり、「Nishikigoi NFT」のファウンダーでもあります。もともとお隣の魚沼市にある旧広神村で生まれ育った竹内さんは、大学で教職課程を専攻しました。しかし、その道のりは一筋縄ではいかず、試行錯誤を繰り返した末、地元新潟に戻ることを決意します。
運命を変える出来事が起きたのは、2004年の中越地震でした。当時、竹内さんは塾講師として授業中で、震災の衝撃を直に体験しました。その後、学習塾を退職し、山古志村のボランティアセンターでの活動を開始。竹内さんの主な役割は、仮設住宅で暮らす村民一人ひとりに寄り添い、孤独を感じさせないよう声をかけ続けることでした。
2007年以降、竹内さんは山古志の復旧と復興に一貫して携わってきました。その活動の中で、竹内さんは村民との深い信頼関係を築き、地域の未来を支える存在となっています。山古志に生き、山古志とともに歩む竹内春華さんの姿は、山古志の歴史と未来をつなぐ懸け橋となっています。